読書帳

Gaussian Wigner Matrixの最大固有値の収束

NIPS2012のランダム行列のチュートリアルからの抜粋。

$\mathbf{W}_{d}$を$d$次元対称行列で対角要素は$0$、非対角要素は標準正規分布に従う独立な確率変数とする。 すなわち、

$\lambda_{d}$を$\mathbf{W}_{d}$の最大固有値とすると、$\lambda_{d}/\sqrt{d}$は$d\to \infty$でalmost surelyに2に収束する。

参考にしているチュートリアルでの比較的簡単な証明で得られる結果(参考資料の定理4.1.1)では、 ここまでtightなバウンドを示すことができない($\log d$のfactorがかかる)。 これ自体の証明は結構大変らしいが、できれば何か直感的な理解ができるような説明があるとうれしい。

また、ここで$\mathbf{W}_{d}$の事をWigner行列と呼んでいるが、Wigner行列自体はもっと広いクラスの行列を指す言葉の様子。 統計物理の文脈でよく出るようで、関連するチュートリアルや講義資料が多く見つかった。

(追記)

しばらく前にここまで原稿を書いた後によくよく考えたら、これはWigner’s Semicircle Lawからすぐに示せることに気づいた。 実際、以下のTodd Kemp氏のレクチャーノートで、Lemma 6.1としてこの事実をSemicircle Lawから示している。 NIPS2012のチュートリアルにあった「難しい定理」というのはSemicircle Lawの事だったのかな。

ついでに上に挙げたWigner行列のもっと広義の定義というのは、Kemp氏のチュートリアルによると、各エントリが独立かつ2乗の期待値が有限。さらに対角成分はi.i.d.の分布、非対角成分も(対角成分とは異なるかもしれない)i.i.d.の分布というものを言う(従って、スカラーの確率変数としては対角成分と非対角成分の2種類しかなく、2乗の期待値もその2種類での有限性だけ言えば十分)。 また、Wigner行列を$d^{-1/2}$($d$は行列のサイズ)でスケール変換したものもWigner行列と言うらしい。

出典

Tropp氏のチュートリアルの35ページ、4.4.1章

参考文献

Joel A. Tropp氏のNIPS2012のチュートリアル

Alice Guionnet氏のレクチャーノート

Todd Kemp氏のレクチャーノート